感想:教育系サブジェクトリポジトリの可能性を求めて

先日、予告したとおり教育系サブジェクトリポジトリの可能性を求めて*1に行ってきました。ただし、午前中に別件(NTCIR-7 meeting)の方に行っていたため、栗山さんの講演は聴けませんでしたが。

参加人数は、20〜40人くらいだったでしょうか(ちゃんと数えてないので怪しいですが)。主催者の方は学内の参加者が少なめだったのを残念がっているようでした。

最後のパネルは司会者が聴衆を指名して発言させるというあまり見ない形式であったためか、最初から盛り上がった議論がされたような気がします。議論としては、以下が2大テーマだったと思います。ほとんど、収録範囲の話だけで時間が来てしまいましたが。

  • 教育サブジェクトリポジトリの収録範囲は?
  • 教育実践資料の収集・公開について

関連して、このシンポジウムに参加されていた国立教育系大学図書館協議会の参加館(大阪教育大学兵庫教育大学奈良教育大学京都教育大学)の方から自館の収録範囲等について発言(司会者から指名で)ありました。教育実践資料は教育分野の貴重な資料であるので、ぜひともリポジトリに載せたいが、(生徒の)肖像権や個人情報の保護の観点からどう公開していくか難しい点があるという発言があり、ある大学ではそのような写真はすべてマスキングした上でリポジトリに登録するということで対処しているという発言が印象に残りました。

最も印象に残ったのは、NIIの尾城さんの

機関レポジトリの本質的な機能は、大学内の研究成果をインターネット上にきちんと場所を作って、そこに固定するという機能ではないかと思っている。そのため、機関リポジトリ自体は収録範囲はあまり考えなくてよいのではないか。

という発言でした。

これにはなるほどーと思いました。自分の中で、データベースとリポジトリってなにが違うのだろうとぼやーっと思っていたのがすっきりした気がします。だから、一次情報が登録されていないものはリポジトリじゃないという話があるのですね。

教育系サブジェクトリポジトリの現在の構成では、各大学の機関リポジトリから教育系データのみを吸い上げて公開するという構成になっていますので、機関リポジトリに入っていない情報は、教育系サブジェクトリポジトリには収録されません。私としては、教育系サブジェクトリポジトリには、各大学の機関リポジトリに入っていない教育系の情報(例えば、大学を卒業して高校等の教師になった方の教育実践記録や、機関リポジトリのない大学の先生の教育分野の研究成果など)に対して、「インターネット上にきちんと場所を作って、そこに固定するという機能」を担ってほしいなと期待しています。

ところで、教育系サブジェクトリポジトリという観点とは別に、教育系データベースの構築方法という観点で、3人目の講演者の岩田さんの話*2はとても参考になりました。
利用者の要求するテーマに合致した検索を可能にするためには、どんなデータベースが必要なのかという点について、どのようなデータ項目、分類、シソーラスが必要なのか、を細かく調査されていました。既存の関連教育系データベースの調査内容や、おなじようなことを示す内容でも研究コミュニティによって使う用語が異なることなど具体例を交えて説明してくださり大変わかりやすかったです。利用者の検索要求を最大公約数的に把握して、利用者の検索要求に合った情報を検索できるようなデータベースの設計が重要だという点には大いに同意しました。

*1:当日資料: https://library.u-gakugei.ac.jp/edu-rp/sympo2008/(2009-01-09追記

*2:科学研究費補助金 基盤研究(B) 2002年〜2004年 教師教育・教員養成に関連する文献のデータベース構築とその効率的利用に関する研究, 岩田 康之(研究代表者)