疑問解決:レファレンスの回答について考えてみる

いままで、レファレンスと直接回答というネタで2つのエントリをあげているのだけど、

だけど、なぜか、大学生のときに、「レファレンスで、直接回答を答えてはいけない」といったことを言われていた記憶があったのだけれど、どうしてそう思ってしまったのかどうも腑に落ちない。


レファレンスの回答について考えてみる - 気持ちよい生活を送ろうより引用

という疑問は解決されてなかった。

ふとしたきっかけで、日本図書館協会公共図書館部会参考事務分科会が1961年に作成した「参考事務規程」というものがあることを知った。この規定のレファレンスの回答事務の原則は、以下のようになっている。

(回答事務の原則)
3. 回答事務は資料を提供することを原則とする。
4. 前条の規程にかかわらず、軽微な質問であって、資料の裏づけのあるものに限って解答を与えてもよい。
5. 自館で資料を発見出来ない場合には、適当な他の図書館または専門機関・専門家への紹介または照会をはかる。
6. 3条から5条までの範囲を越える便宜または利益の供与はしない。


渋谷嘉彦, 大庭一郎, 杉江典子, 梁瀬三千代. “ 資料II 参考規程 (日本図書館協会公共図書館部会参考事務分科会 昭和36年)”. 情報サービス概説. 渋谷嘉彦編. 改訂, 東京, 樹村房, 2004, p.167-170 . より*1

この規定の回答の原則は、「現在でも専門図書館以外の大部分の図書館で採用している方針であろう。」*2とある。

また、全国公共図書館協議会で、2003 年度から「公立図書館におけるレファレンスサービスに関する調査研究」*3をテーマとする調査研究で行われており、このプロジェクトで行われた2003 年度のアンケート方式による「公立図書館におけるレファレンスサービスに関する調査」で収集されたレファレンスサービスに関する規定類(30件)について、以下のような記述がある。

今回提供された規程類の条項をそれぞれ比較してみると、これらの規程類に、日本図書
館協会公共図書館部会参考事務分科会「参考事務規程」(1961 年3 月)、「神戸市立図書館
相談事務規程」(1959 年12 月)、「大阪府立図書館参考事務取扱要領」(1969 年8 月)の3
つの規程が影響を与えているようである


吉田昭子.“レファレンスサービスに関する規程類について”. 2005年度(平成17年度)公立図書館におけるレファレンスサービスに関する報告書. 全国公共図書館協議会編. 東京, 2006, p19-32. http://www.library.metro.tokyo.jp/15/pdf/r05_allchap.pdf, (参照 2009-02-18)

なるほど〜、このへんから「直接回答はしてはいけない」と私が思うようになったもしくは、当時はそう教わったのであろう。
ああ〜すっきり。

このエントリで挙げた文献を読むとレファレンスサービスの定義やレファレンス質問での回答についても、だんだん変わってきていて、直接回答する方向に変わってきているみたい。

*1:他の規定との対応表という形ですが、こちらの文献でも、この規定の全文が読めます。→吉田昭子.“レファレンスサービスに関する規程類について”. 2005年度(平成17年度)公立図書館におけるレファレンスサービスに関する報告書. 全国公共図書館協議会編. 東京, 2006, p19-32. http://www.library.metro.tokyo.jp/15/pdf/r05_allchap.pdf, (参照 2009-02-18)

*2:渋谷嘉彦, 大庭一郎, 杉江典子, 梁瀬三千代. “(5)レファレンス質問の回答”. 情報サービス概説. 渋谷嘉彦編. 改訂, 東京, 樹村房, 2004, p.128-131 .

*3:こちらでこのプロジェクトの調査報告書が読めます→http://www.library.metro.tokyo.jp/15/15h2003.html