レファレンスの回答について考えてみる

似たような記事になってしまっているのですが・・・。

以前にも、書いた*1のだけど、私は、レファレンスで、資料の提供にとどまらず、回答として情報を直接、提供してもよいと思っています。もちろん、図書館員の記憶や知識から直接情報を提供してはだめだけど、根拠となる資料の元に回答に該当する情報を利用者に提供するのはOKだということです。

たとえば、江戸時代の就学率を知りたい(レファレンス協同データベース)のように、ずばり、26.7%です。と答えているのはとてもよい回答だと思っています。

だけど、なぜか、大学生のときに、「レファレンスで、直接回答を答えてはいけない」といったことを言われていた記憶があったのだけれど、どうしてそう思ってしまったのかどうも腑に落ちない。

気になってちょっと手元にある資料で、調べたみたのだけれど、直接、情報を提供してはいけないという考え方は、存在するようです。

レファレンスの3つの概念(1930年のワイヤー:「保守」、「中庸」、「自由」; 1960年のローススティーン:「最少」、「中間」、「最大」)

  • 「保守」、「最少」:情報を提供することよりも、図書館資料及び図書館の使い方を指導することに重点を置く考え方
  • 「自由」、「最大」:図書館の利用指導に具体化される教育的機能より、利用者がそのまま使える情報を提供する責任のほうを優先する
  • 「中庸」、「中間」:上記二つの大局的なサービス理念の間に位置する


司書課程の講義で使用されている教科書:渋谷嘉彦, 大庭一郎, 杉江典子, 梁瀬三千代. “(3)レファレンスサービスに対する三つのアプローチ”. 情報サービス概説. 渋谷嘉彦編. 改訂, 東京, 樹村房, 2004, p. 25-27.より、要約

ここでいう、「保守」、「最少」のアプローチの場合は、いきなり情報を教えてしまうと、自力で情報を見つける力が身に付かないので、情報を提供するのではなく、図書館の使い方を教える。→情報提供をしない(しちゃだめ)ということのようです。

今日ではレファレンス機能というのは、レファレンスワークにおける受動的な機能と、情報サービスにおける能動的機能からなる。また内容的には、以下にあげるように、利用案内と情報ないし情報源の提供との二つの機能に大別することができる。
1)利用案内(指導)と情報(源)提供:利用案内ないし、指導の機能は、図書館あるいは情報メディアの利用法について案内ないし、指導助言を行う機能である。これは、図書館利用の経験に乏しい利用者や、図書館が行う各種メディアの選び方、利用法に不慣れな利用者に対するサービスとして効果を発揮する。
他方、情報ないし情報源の提供機能は、利用者が求めている情報そのもの、ないしはその情報を記録しているメディア、たとえば、図書、雑誌記事などの印刷資料、CD-ROMなどの電子メディアを提示あるいは提供する機能である。
2)両機能の関係:利用案内(指導)と情報(源)提供のうち、いずれに重点をおくかは、図書館の種類、さらに個々の図書館が置かれている具体的条件、たとえば、利用者要求の種類、図書館コレクションの量・質などによって異なる。しかも、レファレンスサービスは本来、個別的サービスであることから個々人に対して、さらに特定の利用者層に対しても、それぞれの機能の強調の度合を異にするサービスが行われることが多い。

・・・ 略 ・・・

一般に、学校図書館では、児童生徒の創造的能力、情報処理能力を育成し、心身の発達に伴う種々の課題を達成するのに役立つことを主要な目的とすることから、児童生徒のためには利用指導機能が重視される。

・・・略・・・

大学図書館の場合、学生を対象にして教育機能を発揮する側面では、レポートや卒業論文の作成にかかわる情報・資料の収集法、効率的な情報・資料の探索法、さらに利用法の習得を初めとして、各種の利用指導機能が強調される。


“(2)レファレンス機能”. 図書館情報学ハンドブック. 図書館情報学ハンドブック編集委員会編. 第2版, 東京, 丸善, 1999, p. 667-668.より引用

ここでも、学校図書館大学図書館のような教育的な現場では、児童・生徒・学生の教育という観点から、いきなり情報を提供しちゃったら自力で探す力がつかないので、利用指導に重点をおく(→つまり、情報提供機能は弱めになる)と書かれています。

ようするに、絶対に情報提供しちゃだめというわけではなく、利用者、その時々の場面や図書館の環境・方針等によって、情報提供する場合と、あえてしない場合があるということですね。また、状況によっては、情報提供したくてもできないというのもあるでしょう。

しっかし、ぜったい直接答えを教えちゃダメなんて、どうして思いこんじゃったんだろうなあ。「最少」アプローチを講義等で聞いた時に、なにか勘違いしてしまったのだろうか・・・。もしくは、ちゃんと典拠を元に回答すること(自身の知識等で答えてはいけない)あたりも混じっておかしな解釈になったのかもしれない・・・。

それとも、レファレンスの歴史的経緯からいくと、どうやら初期は「最少」アプローチだったのが、だんだん「最大」アプローチに向かっていっているということなので、昔ながらの「最少」アプローチが基本・理想なんだーと刷り込まれているとかなのだろうか・・・。

これまで見てきたように、レファレンスサービスの拡張と発展は、明らかに、「保守」あるいは「最少」アプローチから「自由」あるいは「最大」アプローチの方向に進行しているといえるであろう。したがって、現代の一般的な図書館のサービス方針は、「中庸」あるいは「中間」アプローチであるとしても、より「自由」あるいは「最大」アプローチに近い位置にいることになる。今後もさらに最大限のサービス方向に進むことは疑いない。

司書課程の講義で使用されている教科書:渋谷嘉彦, 大庭一郎, 杉江典子, 梁瀬三千代. “(3)レファレンスサービスに対する三つのアプローチ”. 情報サービス概説. 渋谷嘉彦編. 改訂, 東京, 樹村房, 2004, p. 25-27.より、引用